かなり進行したアレルギー性鼻炎と喘息が主症状である。その他、左足関節に
捻挫の後遺症があり、下腹部の膨満感などがある。長年の蓄積疲労を感じさせる
身体である。環椎後頭関節周辺のコリは、予想通りのもので、簡単には鍼が通ら
ない。少しずつ針先でほぐしながら、刺入すると鼻に響きがあるというので、そ
こをしばらく刺激した。まったく臭いを感じないということであるが、この処置
を一週間に一回の割合で繰り返したところ、3回目くらいから臭いらしきものを
感じることがあると言っていた。この患者の場合は、嗅覚の回復を目的にはして
いない。上部頸椎のコリを緩和することによって、全身状態を改善することが目
的である。喘息を患っている人に良くあることだが、第一胸椎両側がコリで盛り
上がっていた。これに対しても、コリの緩和を目的とした鍼をする。この部分の
処置で、呼吸が楽になっていることを確認してもらう。喘息に関しては、医師に
指示された薬を飲みながらの治療である。喘息は、アレルギー性のものと思われ
る。同様の処置を反対側に対しても行った。一本の鍼に対する施術時間は数分程
度であるので、すぐに時間が過ぎてしまう。
 臭いをまったく感じなくなって2ヶ月以上経つと言うことであったが、この治
療を5回繰り返した後、感覚が戻ってきた。「何パーセントくらい戻りましたか
?」と尋ねると「100パーセント」と言う。むろん、客観的な評価ではないが
主観的には、その程度に回復したという。

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